【牧師の本棚vol.4 『コーダ あいのうた』(2022年、シアン・ヘダー監督)】
CODAとは、「Children of Deaf Adults」の略で、「聞こえない親を持つ、聞こえる子ども」という意味です。主人公はろう者の両親と兄を持つコーダです。本作でろう者の両親と兄を演じたのは、ろう者の俳優でした。「ろう者役には、ろう者の俳優を」。これは、監督のシアン・ヘダーさんの強い意志で実現しました。当初映画会社は、家族役には著名な聴者の俳優を起用するよう求めました。しかし、「耳の聞こえない人の役があるのに、耳の聞こえない優秀な役者を起用しないのは考えられない」とそれを断ったのでした。現在のアメリカでは、マイノリティの役には当事者の俳優を起用しようとする動きが広がっています。その背景には非当事者が演じることで、当事者をめぐり誤った認識や偏見を植付けてしまう恐れや、当事者の雇用の機会が奪われるからです。本作は、私たちの世界をありのままに映し出すその姿勢が、観る者の心を動かしたのだと思います。私たちの世界もすべての人がキリストに結ばれて、一つの世界が作られているように、すべての人が用いられてこそこの世界は美しいのだと思います。