【牧師の本棚vol.1 『コーヒーが冷めないうちに』(2015年、川口俊和著)】
小説の舞台は、過去に戻れるという喫茶店。いろいろな意味で別れを経験した人たちが喫茶店を訪れ、それぞれ過去に戻っていきます。仕事で海外へと旅立たれてしまった恋人、認知症の夫に忘れられてしまった妻、事故で姉を失ってしまった妹。それぞれ大切な人との別れによって失ってしまった何かを取り戻したいと過去に戻っていきます。しかし、「たとえ過去に戻っても、現実を変えることは出来ない」と決められています。変わらない現実のために過去に戻る意味はあるのか。しかし、大切な人との再会を果たし、現実に戻った登場人物たちは、現実は何も変わっていないけれども晴れやかな顔で喫茶店を後にします。それは過去の自分自身と向き合い、心に刺さったままであった刺を抜くことが出来たということだと思います。つまり、変わったのは現実ではなく、自分自身なのです。私たちも自分自身の心を開き、すべてを神様に委ね、心の刺を抜いていきたいと思います。