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【牧師の本棚vol.2 『ウェスト・サイド・ストーリー』(2022年、スティーブン・スピルバーグ監督)】

ミュージカルが1957年に初演され、1961年に映画化。60年の時を経て、再映画化されました。物語の舞台は、1950年代後半のニューヨークはマンハッタン西部。当時のアメリカは経済的にも、文化的にも黄金期を迎える一方で、公民権運動真っ只中でした。ポーランド系アメリカ人とプエルトリコ系アメリカ人の2つの少年非行グループの抗争に巻き込まれる男女の恋を描きます。「トゥナイト」「アメリカ」「マンボ」に代表されるミュージカルナンバーは問答無用で観る者の心を高揚させます。このミュージカルの製作の際、原案、脚本、作曲、ミュージカル歌詞を担った4名は、全員がユダヤ人、セクシュアルマイノリティ、共産党支持者でありました。つまり彼ら自身が差別を受ける立場であったのです。そんな彼らが公民権運動を背景に人種差別を軸にしたミュージカルを作り上げたのでした。再映画化された2022年の私たちにとって、このテーマは過去のものでしょうか。1961年版を公民権運動と結びつけるならば、スピルバーグ版はBlack Lives Matter、日本における在日外国人への差別、入管法改正問題などの文脈でとらえることが出来るでしょう。60年の時を経て同じテーマがリアリティをもって語られてしまう…。それほどに私たちは罪から逃れることが出来ない存在です。それゆえに、キリストの十字架を思い起こさせる本作のラストシーンは、観る者の心を打つのではないでしょうか。